常染色体劣性遺伝による遺伝性疾患「ウィルソン病」

これからの医療は「遺伝」がカギになる

ウィルソン病(常染色体劣性遺伝)

常染色体劣性遺伝による遺伝性疾患「ウィルソン病」について紹介していきます。どのような障害を引き起こす病気なのか、詳しく見ていきましょう。

ウィルソン病(常染色体劣性遺伝)

ウィルソン病とは

ウィルソン病は先天性の金属代謝異常を持つ疾患です。銅の代謝に異常をきたし、過剰な銅の沈着を引き起こす病気です。体内の酵素を構成する要素である銅は人間が生活していく上で必要不可欠な物質ですが、過剰な銅の蓄積は細胞障害を引き起こす要因となります。肝細胞で生成されるATP7Bによって銅は運ばれ、胆汁中にて排泄されていきます。しかし、ウィルソン病になるとATP7Bが作動しなくなり、銅が過剰に体内へ蓄積されていきます。そして、全身組織に運ばれた銅が脳や角膜などの障害を引き起こすのです。
ウィルソン病はATP7B遺伝子の変異が原因で発症します。しかし、変異が起こる機構については詳しく解明されていないのが現状です。

発症する確率

3万人から4万人に1人の割合で発症するのがウィルソン病で、遺伝型式は常染色体劣性遺伝です。常染色体劣性遺伝のため、発症した患者の両親は必ず保因者であり、患者の兄弟が発症する確率は25%、保因者である確率は50%です。数字だけ見れば非常にまれな疾患のように思えますが、片方の遺伝子が異常遺伝子であるヘテロの保因者が500人から600人という計算なので、そう考えると案外身近な病気です。成人になってから発症するケースもあり、発症年齢はおよそ3歳~50歳と幅広いです。日本においては、欧米よりも早めに発症しやすい傾向にあります。

ウィルソン病の症状

銅が最も蓄積しやすいのが肝臓です。肝臓は別名「沈黙の臓器」と呼ばれるほど、自覚症状が出づらい器官です。そのため、状態が悪化していても気付かないケースが多いです。銅が蓄積することで、食欲不振や肝障害、黄疸が見られるようになります。脳に銅が蓄積した場合には中枢神経の障害を引き起こし、うつなどの精神症状や手の震えなどが症状として出ます。腎臓の場合は血尿や結石、関節の場合は骨や関節の障害を引き起こします。
内分泌症状では、低血糖や月経不順、不妊などがあります。また、カイザーフラッシャー輪と呼ばれる、角膜部分に緑褐色あるいは黄金色の輪が見える現象が起きます。カイザーフラッシャー輪は、ウィルソン病患者の8割以上に見られる症状です。
このようにウィルソン病の症状は様々ですが、小児期では肝障害、15歳~20歳あたりでは手の震えや言語障害あるいは精神疾患に似た症状が出やすいとされています。

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